投稿者: MyEix

  • AIは仕事を奪うのか?企業で始まった「人間とAIの分担」を見る

    AIは仕事を奪うのか?企業で始まった「人間とAIの分担」を見る

    AIによって変わるのは、仕事の数だけではありません。

    企業や大学の事例を見ると別の動きがあって、人間の仕事をAIへ丸ごと渡すのではなく、仕事そのものを「人間とAI」で分担し始めています。

    • 研究者の隣にAIを置く。
    • 複数のAIをチームとして使う。
    • 社内ノウハウをAIが扱える形にする。

    この違いは重要で、見るべきなのは「AIに奪われない仕事」ではなく、AIが仕事に入ったあと、人間には何が残るか。

    キリンでは、AIが研究者の「隣」に入る

    キリンでは、AIエージェントを研究活動に組み込む取り組みが始まっているようで、これはAIに研究を丸ごと任せる仕組みではなく、仮説形成や情報探索、壁打ち、文書化、知見共有などAIが支援してくれるようです。

    研究者とAIで工程を分ける形となっていて、これまでの生成AI活用とは、ここが違ってきています。

    文章作成だけをAIへ渡すなら作業の自動化ですが、研究の流れにAIが入るのであれば、仕事の設計が変わってきます。

    人間だけで進めていた研究を「人間とAI」で進める仕事へ組み直す。

    AIを「個人の道具」で終わらせない企業もある

    ピーバンドットコムでは、さらに別の形が見られ、7つの専門AIエージェントからなる「マーケティングAIチーム」が構築されているようで、2026年7月から、全社員が利用できる環境として運用しているようです。

    ここでAIの数に驚くのではなく、見るべきところはAIを一部社員の特殊技能にしていない点で、ChatGPTなどを個人で使う場合、その活用度は人によって変わってくるのですが、AIが社内システムへ入れば話は別で、AIを使うこと自体が、仕事の前提となっていきます。

    「AIが得意な社員が使う道具」から「社員が利用できる業務環境」への移行。

    人間のノウハウまでAIが扱うようになる

    さらに先には、業務知識をAIへ渡す動きがあり、オプトについては、Claudeの「スキル」を260個作り、広告運用のノウハウをAIへ教える取り組みが報じられています。

    260個という数字や具体的な仕組みについては、企業側からの一次情報ではないので、確定情報として鵜呑みにすることはできませんが、それでも、業務知識をAIが使える形にするという考え方は重要です。

    これまでノウハウは、人間が覚えて使うものでした。

    それすらAIが扱えるようになれば、人間側に必要な仕事は変わってきます。

    • 何をAIへ教えるのか
    • どこまで任せるのか
    • AIの出力を誰が判断するのか

    作業そのものより、その最初の判断がとても重要なものになっています。

    教育も「AIを使える人」の先を見始めている

    仕事が変われば、育てる能力も変わっていくもので、宮城大学は、2028年4月の設置を目指し、「デザイン創学群(仮称)」を構想しているのだそうで、掲げられているのは、単純なAI操作の習得だけではなく、AIやデジタル技術を使いながら、可能性を見つけ、価値を構想し、実現する力。

    高知工科大学と岡村文具による生成AI活用研修もあり、こちらは人手不足への対応が目的で、約90人が参加し、生成AIを業務で使う考え方を学んでいるのだとか。

    AIで空いた時間を、別の仕事へ振り向ける発想であり、これは単純な人員削減とは意味が違います。

    「AIに奪われない仕事」を探しても答えは出ない

    もちろん、今回の事例だけで雇用の未来を断定することはできません。

    • AI導入後に雇用人数がどう変わったのか
    • 生産性がどれだけ上がったのか
    • 職種ごとの必要スキルがどう変わったのか

    まだ始まったばかりということもあり、そこまでは確認することはできません。

    現在は人間が担当していても、将来、それがAIに代替されないとは限りません。

    しかし、その一方で、今回の事例には「AIを人間の代用品として置くだけではない」という共通点があり、

    • 研究では、AIが研究工程に入る
    • 企業では、AIチームを業務環境に入れる
    • ノウハウは、AIも扱える形へ移される
    • 教育では、AI利用を前提に能力を考える

    つまり、人間とAIの境界が引き直されていて、人とAIの仕事を考える基準も変えていく時期なのかもしれません。

    「この仕事はAIに奪われるか」ではなく、自分の仕事を工程に分けたとき、どこまでAIへ渡せるか。

    そして、AIに渡したあとで残る判断はなんなのか・・・。

    • 問題を決める
    • AIへ渡す仕事を決める
    • 出てきた結果を評価する
    • 最終的な責任を持つ

    AI時代の仕事を見るなら、まずここを確認するべきで、仕事が残るかではなく人の役割がどこへ移っていくのか。

    その変化は、自分の業務を分解していくことで、見えてくるもの。

  • 人型ロボット競争の評価軸、走る速さから「働ける手先」へ

    人型ロボット競争の評価軸、走る速さから「働ける手先」へ

    北京で開幕したWorld Humanoid Robot Gamesで、中国製の人型ロボットが100メートルを9.39秒で走ったのだそうです。

    比較条件の詳細までは詳しく示されていないものの、前年から身体能力を急速に伸ばしていることが分かる記録となっていて、走行やダンスのような大きな動きは映像でも伝わりやすく、人型ロボットの進歩を象徴する成果としては驚くべき進化となっています。

    一方、今年の競技では、ネジ締め、ボトルを開ける作業、ピンセットで物をつまむ操作も評価対象になっているようで、走る速さとは対照的に、どれも目立たない作業になっているとはいえ、工場や店舗などで仕事を任せるなら避けて通れない能力でもあります。

    同じ競技会で試されている二種類の能力は、人型ロボット競争の変化を表していて、動けること自体に価値があった段階から、現実の物を扱い、人間の仕事の一部を担えるかが問われる段階へ移り始めてきているようです。

    派手な動きから、仕事に近い競技へ

    走行やダンスなどでは、姿勢を保ちながら身体全体を動かす性能をみることができ、人型ロボットが転ばずに走り、複数の動きを組み合わせられることは、機体の完成度を示す材料となるのですが、実際の仕事の現場で求められるのは、このような大きな動作ではありませんよね?

    ネジを締めるには、対象の形に合わせて手を動かさなければならないですし、ボトルを開ける作業と、ピンセットで物をつまむ操作では、扱う物の大きさも動かし方も大きく異なります。

    単に腕や指を動かせればいいというわけではなく、目の前の対象に応じて操作を変える必要があり、こうした違いが、走る・踊る競技と実作業競技の間にはあります。

    ロボット分野への投資額が増えるにつれ、動作を披露できるかだけでなく、投資に見合う仕事を実際に担えるかが問われるようになり、競技に細かな作業が組み込まれたことも、評価の焦点が「人のように動けるか」から「作業を任せられるか」へ移りつつあることを示しているようです。

    人型ロボットの実用性を考える場合、映像の派手さだけでは評価することはできません。

    ネジ締めやピンセット操作を競技として評価する動きは、仕事に必要な能力を具体的に試すものであり、ただ歩いたり走ったりする機械ではなく、周囲の物に合わせて動作を選べる機械へ進めるかが問われ始めてきています。

    物を扱う仕事は、速く動くだけでは成立しない

    決められた距離を速く走る能力と、形や条件の違う物を扱う能力は全く異なる。

    走行では身体全体を一定の方向へ動かす一方、実作業では対象ごとに力の加え方や動かす範囲を変えなければならないですし、ネジ、ボトル、ピンセットは、同じ手先の動作とはいえ、その動きは全く別のもの。

    現実の物には、摩擦、重量、形状の違いがあり、作業中に対象がずれたり、想定した位置に収まらなかったりするなど、予測不能な動きも起こりえます。

    そのたびに状態を捉え直し、次の動作を調整する必要があるため、あらかじめ決められた動きを再生するだけでは仕事になりません。

    この違いを踏まえると、「人型ロボットは手先が重要になる」という表現は、指や関節を細かく動かせるという意味だけではなく、目の前にある物の状態を把握し、その物に適した動作を選び、途中の変化にも対応する能力まで含んでいます。

    モーターの性能は引き続き必要となりますが、それだけでは実作業の安定性を高められません。

    競争の中心は、機体を速く力強く動かすことから、現実世界を理解したうえで手を動かすAIへ移り始めていて、身体能力の向上が実用化の土台だとすれば、その能力を仕事へ結びつけるのがロボットAIの役割になっていきます。

    次の競争を左右するロボットAIと動作データ

    UnitreeやACE Roboticsなどの中国企業は、次の競争は身体能力ではなく「ロボットの頭脳」になると説明しており、ここでいう頭脳というのは、ロボットが周囲の状況や対象物を捉え、それに応じた動作を選ぶAIのことを指していて、企業側も、機体が動けることの先に、現実の作業へ対応する能力があるかどうかを見ている。

    ただし、実環境で使えるAIを育てるには、学習に使う高品質な動作データが必要となり、ロボットがネジ締めやボトル開けを安定して行うには、それぞれの作業で人間がどのように手を動かし、対象の状態に合わせて調整しているかを学ばせなければなりません。

    現状では、その材料となる動作データが不足していて、文章や画像のデータとは異なり、動作データには、物の形や重さ、手の位置、動かす順序といった現実の条件が伴います。

    実作業を扱うAIでは、似たように見える動作であっても、対象や環境の違いを含んだデータが求められ、この蓄積が不十分であれば、限られた条件では成功しても、別の条件へ対応できない可能性が残ります。

    ACE Roboticsは、工場などで人間の動作を収集し、数千万時間規模のデータ蓄積を目指していて、達成時期やデータの内訳は示されていないのですが、この規模の計画を掲げていること自体、実作業能力の向上に大量の訓練材料が必要だと認識されていることを示しています。

    人型ロボットの性能競争は、外から見える機体の動きだけでは捉えにくくなっており、どのような動作を学習させるのか、そのためのデータをどれだけ集められるのかまでが、実際に働けるロボットを作るうえでの競争領域になっています。

    評価されるのは「一度できたか」より「続けられるか」

    実作業では予測不能な条件への対応が必要になるため、人型ロボットは家庭より先に、環境をある程度固定できる場所から普及する可能性が高く、工場、倉庫、店舗、ホテル、警備、配送拠点などであれば、扱う物や作業手順を一定の範囲に絞りやすく、ロボットが学習する条件も限定しやすい。

    そこで問われるのは、競技やデモで一度成功したかではなく、何時間連続で動けるのか、人間が途中で介入しなくても作業を続けられるのか、同じ作業を安定して繰り返せるのかが、実用性を測る基準になっていくと考えられます。

    走行やダンスには、人型ロボットの身体性能を確かめる役割があって、その価値がなくなるのではないのですが、それだけで仕事を任せられるとは判断できないということ。

    高品質な動作データが不足している現状では、異なる条件に対応しながら細かな作業を継続できるかが、実用化までの距離を示しています。

    100メートルを速く走るロボットと、ネジを締めるロボットは、異なる能力を見せ、前者は身体能力の高さを示し、後者は現実の仕事へ対応できるかを試しています。

    次に人型ロボットの進歩を見るとき、確認すべきなのは派手な記録だけではなく、現実の物を扱い、同じ作業を人間の介入なしにどれだけ安定して続けられるか。

    人型ロボット競争の本番は、目立つ動作の披露から、地味な作業を確実に積み重ねる能力の検証へ移り始めてきています。

  • ChatGPTは18歳未満だと「答え方」まで変わる。10代向けAIで変わる宿題と安全対策

    ChatGPTは18歳未満だと「答え方」まで変わる。10代向けAIで変わる宿題と安全対策

    ChatGPTの利用者が年齢を13~17歳と登録するか、システムが18歳未満と推定すると、10代向けの利用環境へ自動的に切り替わる。

    これは本人が「子ども向けモード」を選ぶ方式ではなく、アカウント情報や利用状況などから年齢を推定し、10代だと推定された利用者にも専用の設定を適用することになる。

    変わるのは、有害な内容への制限だけではなく、宿題の答えを求められても、完成した答えをすぐ出すのではなく、考え方を段階的に示す学習モードへ誘導する。

    電卓なら入力した式の答えを返し、検索なら答えが載ったページを並べるが、10代向けChatGPTには、答えを早く渡すよりも、利用者に途中の思考を続けさせる機能が加わった。

    年齢で変わるのは閲覧制限だけではない

    10代向けの安全対策では、過激な暴力、自傷行為、危険な流行、健康を損なう身体イメージ、性的・恋愛的な役割演技などへの制限が強化され、AIを現実の人間関係の代わりとして扱う応答も抑えられる。

    従来の年齢制限は、「この内容を表示するか」という線引きが中心だったが、対話AIでは、答え方や聞き返し方、AIと利用者の距離まで変わってくる。

    宿題の扱いにも、同じ設計が表れ、答えそのものを完全に隠すのではなく、利用者へ質問を返しながら、解き方を一緒に進めていく。

    学習へ使いたい子どもと、宿題を短時間で終えたい子どもを、入力された一文だけで正確に分けるのは難しい。

    だからこそ、最初から解答を渡さない方向へと設定されている。

    年齢推定には誤りも起こり得るだろう。

    18歳以上の利用者が10代向けと推定された場合や、10代が成人として扱われた場合に、訂正方法が使いやすいかどうかも実際の運用では欠かせないはず。

    保護者向けの管理機能も用意されているとはいえ、親が会話内容を常に読む仕組みではないし、利用時間や一部の安全設定を管理しながら、10代本人の私的な会話まで一律に公開しない設計が求められる。

    AIが答えを完成させたのか、解き方を説明したのか、その説明を子ども自身が再現できるのかで学習内容は大きく変わってくる。

    10代向けChatGPTが止めようとしているのは、AIの利用そのものではなく、問題文を入力し完成した答えを簡潔に出すことであり、考えることがが抜ける使い方を停止していく。