カテゴリー: AIビジネス戦略

  • GoogleのAI開放命令で変わるスマホの標準AI

    GoogleのAI開放命令で変わるスマホの標準AI

    AIは性能より「入口」で決まる

    スマホと検索を巡るAI選択権の争い

    AI競争の主戦場は、もはや性能比較だけではなくなり、今後は、スマホや検索の入口を誰が握るかで勝敗が決まってきそうですよね。

    どんなに高性能なAIを作っても、結局のところ利用者に選ばれなければ使われません。

    OSや検索を持っている企業であれば、多少性能が劣っていようが、自社AIを標準機能として端末に配置することができますし、もはやAIの競争軸は、賢さから利用経路へ移ったといえます。

    Googleへの開放要求が示したもの

    欧州委員会は2026年7月16日、Googleに競合AIへの機能開放を求めました。

    対象はAndroidにある11の機能で、競合AIも音声操作を使い、予約や場所の検索を実行できる設計となりそうで、機能開放は2027年7月から始まる予定となっています。

    また、検索サービスの改善に使うデータも匿名化したうえで競合へ共有されるようで、こちらは2027年1月からの実施予定となっています。

    重要となってくるのは、スマホ上で競合AIが、どこまで端末を操作できるようになるかということ。

    これまで競合AIは、アプリとしてまずは起動する必要があり、標準AIであれば、音声、通知、位置情報などへ端末側から直接つながっていました。

    つまり性能が同等であっても、利用するまでの手順には大きな差が出ていたということです。

    強いのは「賢いAI」より端末を動かせるAI

    AIモデル単体の比較では、回答精度や処理速度が重視されるのですが、一般的な日常利用では、回答後に何ができるかが重要といえます。

    というのも、店を調べるだけのAIより、空席確認から予約まで進めるAIのほうが断然便利ですし、商品を比較するだけのAIより、購入や決済まで進めてくれるAIのほうが使われていくのは世の流れともいえます。

    そのためには、AIモデルの優秀さだけでなく、基盤との接続が欠かせません。

    • スマートフォンのOS
    • 検索サービス
    • メールとカレンダー
    • 地図と位置情報
    • アプリと決済機能

    Googleは、検索にAI機能を組み込み、調査から行動まで進める方向を示しており、ただ検索結果を表示するだけではなく、AIがその後の作業を代行する形へと進んでいます。

    この構造では、検索の入口を持つ企業が圧倒的に有利なうえ、多くのユーザはそこで別のAIを使いたいと考えることはほぼないでしょう。便利であればいいんです。

    利用者は別のAIをわざわざ探すことはなく(そもそもそこまで考えが及ばない)、画面上の標準AIを普通に使い、その後の作業を進めていくはず。

    AIの入口は国家も管理し始めた

    入口の争いは、企業間の競争だけではなく、アメリカ政府は2026年7月14日、AI企業と重要インフラ事業者を結ぶサイバー連携組織を設け、AIが発見した脆弱性を共有し、攻撃前に対応する仕組みを構築し、金融、医療、エネルギーなどが対象となっています。

    これは、AIが便利なソフトではなく、国家インフラの一部になったことを示していて、中国も上海のAI会議を通じ、国際的なAI統治構想を示し、AIへのアクセスや国際協力を軸に、アメリカとは異なるルール形成を狙っています。

    EUは市場競争を重視し、アメリカは安全保障との連携を進め、中国は国際標準への影響力を狙います。

    手法は異なっているとはいえ、AIの入口を放置しない点はそれぞれ共通しています。

    AIを選べても、乗り換えられるとは限らない

    AI選択画面が用意されるとしても、競争が公平になるとは限りません。

    問題になるのはデータの移動で、メール、予定、検索履歴、購入履歴などを一つのAIへ渡すほど便利になります。

    一方で、別のAIへ乗り換える際に設定や履歴を移せない可能性があります。

    スマホのAIを変更できても、データを移せなければ実質的な問題は残ります。

    従来は、端末やOSで囲い込みが許されていたのですが、今後は、AIが覚えた個人情報や設定が、
    利用者を囲い込む材料になります。

    なので、標準AIを選べるかだけでは不十分で、確認すべきなのは、データを持ち出せるかどうか。

    利用者が見るべき基準は三つ

    今後、次のAIを選ぶとき、回答性能だけで比較すべきではありません。

    見るべきなのは次の三点です。

    • 標準AIを変更できるか
    • 権限を細かく管理できるか
    • データや設定を移行できるか

    性能がどんなに高くても、端末の全機能へ無制限に接続するAIは危険ですし、安全性が高くても、
    外部サービスを操作できなければ不便でしかありません。

    便利さと選択権の両方が必要となってくることから、AI競争の勝者は、最も賢いモデルとは限らなくなってきました。

    これからは、スマホ、検索、データ、決済を押さえ、利用者が最初に触れるAIがもっとも強くなっていきます。

    これから比較すべきなのは、どのAIが一番賢いかではありません。

    どのAIに、生活の入口を渡すかとなるでしょう。

  • サブスクは「入りやすさ」より「やめやすさ」で選ばれる

    サブスクは「入りやすさ」より「やめやすさ」で選ばれる

    サブスク事業者が見るべき指標は、契約数だけではなく、今後は、解約手続きの簡単さも評価対象になりそう。

    2026年7月、ニューヨーク市が契約と同程度に簡単な方法で解約できる「Click to Cancel」規則を採用したのだそうです。

    オンラインで契約できるサービスは、オンラインで解約できる仕組みが必要で、規則は2026年7月23日から発効されるようです。

    解約画面は、企業姿勢が表れる場所に

    これまで多くのサービスは、契約の入口をできるだけ短く簡単にされてきました。

    メールアドレスとカード情報を入力すれば、数分で利用を始められなんていうのは当たり前で、手軽にサービスを利用できる状況。

    しかし、その一方、解約には別の手続きが必要でした。

    • 電話をかける。
    • 営業時間内に担当者と話す。
    • 複数の画面を移動する。
    • 引き留め案内を何度も断る。

    契約は簡単でも、解約には時間がかかる設計は、どこの世界でも同じ。

    この仕組みは「ローチモーテル」と呼ばれるダークパターンの一種で、入るのは簡単ですが、出るのは難しいという設計で、企業側には、解約率を下げられるという最大の利点があります。

    しかし、利用者が手続きを諦めて料金を払い続けているという状況であれば、大きな問題であり、サービスの本質から外れてしまいます。

    契約者数は維持できるかもしれないが、信頼は失われる。

    アメリカでは連邦規則が止まり、市単位の規制が進んだ

    米連邦取引委員会も2024年、同様の「Click to Cancel」規則を決めていたのですが、2025年、連邦控訴裁判所が手続き上の不備を理由に規則を無効としました。

    無効となったのは規制内容そのものではなく、事前の影響分析が不足していたことが主な理由で、今回のニューヨーク市の規則は、この空白を市の消費者保護制度で埋める動きとなります。

    解約規則は、解約方法を契約方法と同程度に簡単にする制度。

    退会を止めるより、戻る理由を作る方が強い

    解約を難しくする設計と、再契約される設計は全く異なっているといってもいいでしょう。

    前者は、手続きの負担で顧客を残し、後者は、価格や機能への納得で顧客を戻します。

    短期の売上だけを見れば、解約の壁を高くする方が有利なのは当然なのですが、長期的には、問い合わせ対応が増えるうえ、SNSで批判される余地も生まれます。

    一方、解約しやすいサービスは、一時的に解約率が上がるとはいえ、契約時の心理的な負担を下げられるうえ、「いつでもやめられる」と分かっていれば、また簡単に試しやすくなります。

    今後、利用者が確認すべき項目は価格だけではありません。

    • Web上で解約を完了できるか
    • 自動更新前に通知が届くか
    • 無料期間の終了日が明確か
    • 休止やプラン変更ができるか
    • 必須料金を含む総額が表示されるか

    企業側も、これらを利用規約の中へ隠すべきではなく、契約画面と同じ場所で確認できる設計が基準が必要となってきます。

    サブスクを選ぶとき、申し込みボタンを押す前に、解約ページまでを確認するようにしておくことが、自分を守るための秘訣とも言えます。

  • OpenAIが独自AI半導体「ハラペーニョ」を発表。推論特化チップでAIコスト競争が新段階へ

    OpenAIが独自AI半導体「ハラペーニョ」を発表。推論特化チップでAIコスト競争が新段階へ

    OpenAIが、生成AIの推論処理に特化した独自半導体「ハラペーニョ」を発表しましたね。

    この目的は、ChatGPTの応答速度向上と運用コスト削減であり、これはAIモデルの競争から、ついにAIインフラの競争へと軸足が移り始めたことを示す出来事といえるでしょう。


    設計は、OpenAIが担当し、開発はBroadcomと共同で進められたようで、2026年後半からデータセンターへ順次導入される予定となっていて、ChatGPTをはじめとするサービスで利用される見込み。

    このチップは学習ではなく、ユーザーへの回答生成である「推論」に最適化されているようですね。


    なぜ独自半導体を開発したのか

    生成AIにおいては、推論コストが急速に増えており、ChatGPTの利用者が増えれば増えるほど、必要な計算量と電力消費も増えており、これを賄うために開発されたようです。

    これまでは、NVIDIA製GPUが中心だったのですが、GPUは汎用性が高い反面、特定用途では最適とは限らず、推論だけに特化した半導体を開発することで、

    • 応答速度を改善できる
    • 消費電力を削減できる
    • 運用コストを下げられる

    という効果が期待できるようです。

    同様の動きはAI業界で広がっている

    今回のニュース、OpenAIだけが独自チップへ進んでいるわけではなくて、現在大手IT企業が用途特化型チップの独自開発を進めていて、代表的なものとしては、以下の企業がすでに独自開発しています。

    • NVIDIA:汎用GPUで市場をリード
    • Google:TPUを自社開発
    • Meta:AI専用チップを開発

    これまでは「高性能GPUを購入する競争」だったものが、「自社サービス向けに最適化した半導体を設計する競争」へと移ってきており、AI戦争は新たな局面に向かっています。


    今後の注目点

    現時点では性能の詳細は公開されておらず、初期試験では「他社の最先端品を上回る性能」とだけ説明されています。

    比較条件や仕様は、今後明らかになるようですが、気になるのは次の3点。

    • 実際の性能
    • 消費電力の改善幅
    • ChatGPT利用料金への影響

    もし推論コストを大幅に削減することができれば、高性能AIがより低価格で提供される可能性がありますが、そこまで大きな改善がない場合は、利用者がどんどん増えてきていることから設備投資が必要となり、これまでの価格底での運用も難しくなってきそう。


    今回の発表は、新しいAIチップの登場したという話題だけでなく、AI業界の競争が「モデル開発」から「AIインフラの最適化」へ広がっていることを示す出来事といってもいいでしょう。

    今後はモデル性能だけでなく、半導体・電力・データセンターまで含めた総合力が、AI企業の競争力を左右する可能性が高くなってきました。