AIは仕事を減らすより、人間を管理者に変えているだけで、AI導入により仕事が減るという予測は大きく外れ始めている。
実務作業は確かに減ったのだが、その分増えているのは、AIを監督する仕事である。
多くの人はAIに仕事を任せた後、
- 出力確認
- 修正指示
- 再生成
- 品質管理
を繰り返している。
AIは実務的な作業を代替してくれるが、その結果、人間には新しい管理業務が発生した。
これが「ボットシッター」と呼ばれる現象である。
ボットシッターとは何か
ボットシッターとは、AIの世話係のことで、AIは指示された内容を高速で実行する一方、常に正しい結果を出すわけではなく、事実誤認なんてザラであり、事実に基づかない情報を生成する現象(ハルシネーション)を起こす。
文脈を誤解することもあるので、企業で利用する場合、情報漏洩やコンプライアンスの確認も必要になってくる。
そのため人間は「作る人」から「監督する人」へと役割を変え、これまでの社会に例えると、部下を管理する仕事に近くなってきた。
違うのは、管理対象が人間ではなくAIという点だけ。
AIで楽になるはずなのに忙しくなる理由
AI利用者の多くが感じているのは奇妙な矛盾であり、作業時間は大幅に減ったが、忙しさは一向に減っていないこと。
理由は単純で、AIが生み出した時間を、AI管理に使うようになったから。
記事作成の場合、これまでであれば、自分で調査し、自分で執筆していたので、確認と作成業務を同時に行うことができた。
現在は、AIに記事生成を依頼し、その出力を確認する。
そして修正があれば自分で訂正、またはAIに再生成を依頼し、最終確認を行う。
執筆時間はほぼないに等しいが、内容を確認するという管理工程が増える。
しかもAIは、自分で調査する以上のレベルの出力を提出してくることもあり、自分の技量以上の調査を行わなければならないこともしばしば。
AI登場初期の頃は、自分の知識以上のものが出てくることから喜んでいたものだが、あまりにもハルシネーションの多いことから、それが正しいのかどうかこれまで以上に確認しなければならなくなった。
結果として、総労働時間は大きく変わらないどころか、増えているような気がする。
自分で調査・作成する場合、一つの記事を書くだけで仕事の区切りをつけら、一休みすることができたものだが、AIが記事草案を提供してくるようになってからは、確認の連続で、仕事の一区切りをつけるのが難しくなってきた。
生産性向上が労働時間を減らさない理由
この現象はAIに始まったことではなく、過去にも同じことが起きていた。
表計算ソフトが普及した時代、多くの人は経理業務が激減すると考えた が、実際には分析資料やレポートが増えた。
プレゼンソフトが普及した時代も同じで、資料作成は速くなったが、会議資料の量は増えていった。
つまり、効率化は仕事を消すことなく、新しい仕事を生み出す。
AIも同じ構造で、作業コストが下がると、企業はさらに多くの業務を実行するようになり、その結果、人間の仕事は別の形で増え始める。
時間が余ったからといって、人はそれを余暇には当てない。
AI時代に価値が上がる人
今後価値が上がるのは単純作業が速い人ではなく、AIを管理できる人である。
- 適切な指示を出せる
- 出力品質を評価できる
- 間違いを発見できる
- 複数AIを使い分けられる
AIは実行者であり、人間は監督者になる。この構図は今後さらに強くなっていくのだろう。
ボットシッターは一時的な現象なのか
とはいえ、将来的にAI性能が向上すれば、監督作業は減る可能性がある。
流れとしては、AIが別のAIを評価して最終確認を行うということに落ち着きそうだ。
しかし、人間の存在は完全には消えることはないだろう。
なぜなら、企業活動では、品質保証、法的責任、セキュリティ管理が必要であり、あくまでも最終責任を負うのは人間である。
つまりAIが進化しても、人間の監督業務は依然として残る。
形は変わっていくが、役割は絶対に消えない。
AIは仕事を奪うより、人間の役割を変えており、増えているのは失業者ではなく、AIを監督する「ボットシッター」である。
今後重要になるのは、AIより速く作業する能力ではなく、AIを管理し、品質を保証し、成果につなげる能力である。
AI時代の競争力は実務力だけで決まらない。監督力が新しい武器になる。
思考を外に出せ。AIを、自分の武器にする。

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